安楽死と聞いて、皆さんはどんなことを思い浮かべますか?
自分のペットと照らし合わせると、どうも直視しにくい問題です。
しかしペットを飼っている以上、安楽死の問題は1度はじっくりと考えていただきたい問題です。
今日は少し重たいテーマですが、一緒に動物の安楽死について考えてみましょう。
安楽死とは?
安楽死は英語でeuthanasiaと言います。
ギリシャ語で「eu」は良い、「thanatos」は死を意味しており、英語の安楽死の語源とされています。
安楽死を行う際には獣医師が速やかに意識を消失させて、不安と苦痛を最小限にすることを第一に心肺・脳機能を停止させます。
ヒトの場合は尊厳死などの考えも広まってきていますが、動物の場合は、その子自身、どういう最期を迎えたいのかは飼い主さんにもわかりません。
だから実際は、その子の飼い主さんの死生観によって死の選択がなされるわけです。
そのためにも、私たち獣医師は、飼い主さんにしっかりと説明する義務があります。
安楽死の考え方
少し前までは、安楽死についてギリギリまで話題にせず、安楽死の現場を見せないことが、飼い主さんを守ることとされてきました。
しかし現在は飼い主さんに時間をかけて説明をし、なるべく安楽死の現場に立ち会ってもらうことが大切であるとされています。
安楽死は安心できる環境下でおこなってあげたいですよね。
安楽死の実施中は優しく抱きしめ、動物に話しかけ続けてあげることも大事です。
私の経験
かつての私は、安楽死に肯定派でした。
なぜなら、苦しんでいる動物がいたら、苦しみから解放してあげたいと思っていたからです。
しかし実際、悪性リンパ腫の愛犬が安楽死を勧められた時、私は最期まで首を縦に振ることができませんでした。
愛犬は生きているのが不思議と言われている中でも、必死にボウルを抱えて水を飲んでいたのです。
「生きようとしている」
そう思うと、どうしても安楽死を選択できませんでした。
今になって考えても、あのときの自分の選択は果たして正しかったのか、何度も考えてしまいます。
でもきっと、どの選択をしても、心のどこかに後悔は残るのかもしれません。
アルバイトをさせてもらっている動物病院で、ある先生にお話ししたところ、
「その考えも愛情だし、安楽死も最期にしてあげられる愛情。愛に変わりはないんだよ」
と教えてくれました。
私の中で消えない言葉の一つです。
最後に
安楽死。
自分で確固たる考えを持ってると思っていても、いざその状況に立つと頭が真っ白になってしまうかもしれません。
私は将来、獣医師になった時には自らの経験を胸に、動物にはもちろん、飼い主さんの心にも寄り添いたいと強く思います。
愛犬が亡くなった秋を迎え、毎日のように考えてしまうのです。
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