「なぜ獣医師の道を選んだの?」
たくさんの方に聞かれます。
私も、同じ獣医師の道に進む友人に、この質問を投げるのが好きです。
この道を選んだきっかけはみんな、本当に様々です。
動物を極めたい、とにかく動物が好き、たくさんの命を救いたい、馬の獣医師になりたい。
私にとっては、ある1匹の犬が獣医師を目指す大きなきっかけでした。
今日は私の大切な弟、スキップについてお話ししたいと思います。
スキップとの出会い
岩手県の小さな田舎町で生まれた私にとって、身の回りの小さな生き物たちはみんな友達でした。
庭にいるカマキリやダンゴムシ、近くの田んぼにいるカエルやオタマジャクシ。
そんな私が欠かさず見ていたテレビ番組が「どうぶつ奇想天外」。
毎回見るうちに犬の魅力に引き込まれていきました。
小学5年生の夏休みに、犬図鑑を買ってもらい、犬種を300覚えました。
お小遣いもコツコツ貯めて熱意を両親に伝えたところ、念願の犬を迎えることに!
初めて獣医に興味を持ち始めたのは、この頃でした。
ペットショップに行って真っ先に目に飛び込んだのは男の子のラブラドールの子犬でした。
少し困ったような垂眉があって、黒いまん丸な目で見つめてくれたあの瞬間を今でも忘れられません。
迷わず両親に言いました。
「私この子にする!」
家族になったスキップ
おうちに来たこのわんちゃんを、映画 「my dog Skip」にちなんで、スキップと名付けました。
毎朝見るたびに大きくなっていくスキップがかわいくてかわいくて仕方ありませんでした。
スキップは本当にやんちゃで、ハチを食べて倒れたり石を食べて具合悪くなったり…
スキップは陽気で、家族や近所の子供達を心から愛してくれる優しい子で、気づけば地域のアイドルになっていました。
スキップはお散歩とご飯が何よりも大好きでした。
犬と暮らす生活が楽しくて、毎日がこんなに愛で溢れてるなんて知らなかった、とよく思ったものです。
しかし、こんな生活も長くはありませんでした。
スキップを襲った病
スキップが、あるとき突然、大好きなご飯もお散歩も嫌がったのです。
病院に連れていくも「異常なし」。
誤診が続いた後に大学病院に連れて行ったところ、ステージ4の悪性リンパ腫。
私が高校二年生の夏でした。
当時私は、獣医の夢を諦めかけ、音楽の道に進もうとしていました。
もう助からないとわかった時は頭が真っ白でした。
つい最近まで今まで通りだったのに何で…何もできない不甲斐なさと悔しさ、悲しさでいっぱいでした。
「もってあと二週間」
そう宣告されました。
大学病院で点滴をしてお家に帰るとき、必ずスキップは私たち家族を見つけると尻尾を振りながらよたよた駆け寄ってきました。
「スキップの前では泣かないで明るくいてあげよう」
家族で最後に決めたルールでした。
余命宣告から1ヶ月後、スキップは亡くなりました。
3歳と半年の若さでした。
最期のお昼は大好きなお庭を眺めていたそうです。
学校から帰った私と、急遽帰省した姉の顔を見た後、安心したように旅立ちました。
「獣医の夢を諦めないで」
と命をかけて伝えてくれたようで、その時もう一度、獣医になろうと決めました。
私のこれから
一度は諦めかけた獣医の夢でしたが、彼のおかげで私は今、獣医学科で動物の勉強をしています。
夜遅くまでの実習や山のような勉強量に追われる日々ですが、スキップのことを思い出しながら頑張っています。
まだまだ獣医師の卵ですが、いつかは必ず素敵な獣医師になったところを家族やスキップに見てもらいたいです。
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